ジャム道場web版

≪Jam道場≫について(内容の抜粋 道場の結果報告 次回予告など)連載していく予定。不定期に更新しています。

Vol.11 第11回Jam道場 事後報告 2006/02/02

次回は3月1日(水)です。皆様の参加をお待ちしております。


高木宏真
http://www.rivo.mediatti.net/~cek45340/index.html

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Vol.10 第10回Jam道場 事後報告 2006/01/10 最新号

今回の初参加はピアノさん。

日曜ジャム・セッションにも何度か参加されましたが、ピアノさんがピアノを弾くとその熱いプレイにお客さんから歓声が沸きます。細かいパッセージを弾きまくる右手、左手の力強いプレイ、踏み鳴らす足。見ている者を熱くするダイナミックな演奏。演奏経験も、知識も豊富にお持ちのようです。一番見習うべき点は自信に満ち溢れた姿勢ですね。実力者であることは上のコメントでもお分かりいただけると思います。しかしワタクシにはこれだけ弾けるのに勿体無い!と思う点がいくつか見つかります。そのピアノさんがワタクシに話しかけてきました。やはりご自身で欠点はちゃんと認識していたようです。

一言で申し上げるなら、もう少し冷静に、丁寧に弾く、ということです。
細かいパッセージを弾いても指が滑っているような印象、本来弾くべきではないミストーンと思われる音も混じっています。左手の和音もダイナミックに振り下ろすせいか手のひらなどで出すべきでない音まで出てしまっており、表現すべきコードが濁っています。踏み鳴らす足音は意外と大きいもので、結果的に雑音になっています。
「熱いプレイ」を演出するためにやっていると言うことであれば、それはその効果は上がっているわけですし、奏者の個性を出すべきであるジャズであるのだからそれに対して第三者が何か言う必要はないのです。しかし「熱いプレイ」に感動するリスナーの他、大多数のリスナーが「うるさい」と不快に思うのであれば、そのプレイを再考する必要もあるのではないかと考えます。それはあくまで自分で気がつくべきことであります。

ピアノさんは自覚がおありのようですので、いくつかアイデアを提示させてもらいました。
フレーズ
・ハーモニーに対して、なるべくアウトしないフレーズを心がける。カッコいいアウト・フレーズは、ハーモニーに対して安定した、言い換えればあたりまえな、保守的な定番フレーズをきちんと弾けるようになってから。 リズム(ノリ) ・8分音符、8分音符の2拍3連を中心に弾く。8分音符のノリに神経を遣う。イーブンと2拍3連の間に、心地よいスイング感が存在する。
ちょっと弾けるようになると「2拍3連」に近い、跳ねた感じのノリになりがち。その場合意識してイーブンの8分音符で弾くように心がける。ベース&ドラムがかもし出すスイング感がバックグラウンドにあるので、ソロ・フレーズまでが3連のノリにする必要はない。総合して聞くリスナーの耳には、必要以上に跳ねたノリに聞こえてしまう。
32分音符、また7連符や9連符のように、(ジャズなのであるから)最終的につじつまが合えば良いとしてばらばら弾きまくるのも、今は我慢。
音数を厳選したあたりまえなフレーズ(単純なペンタトニック・スケールなど)を、「ノリ」に神経を遣って弾くフレーズの方が、「カッコいいフレーズ」よりもずっと、カッコよく聴こえる。
ペダルに注意。踏みすぎで、濁ってはいないか?
という感じです。

ワタクシ自身もかつてはこのようなピアノを弾いており、ウケるもンで結構悦にいっていたのです。ある時録音(録画)を聴いて、上のようなことを自覚し、丁寧に弾くことを自分に命じた経緯があります。
ピアノさん 理解していただけたら嬉しいし、もっといいピアニストになると思います。

次回Jam道場は未定。決定次第連絡申し上げます。

高木宏真
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Vol.09 第9回Jam道場 事後報告 2005/11/17

次回は12月27日(火)です。皆様の参加をお待ちしております。

高木宏真
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Vol.08 第8回Jam道場 事後報告 2005/11/07

今回の初参加はヴォーカルさん。

譜面のことは何もわからないとおっしゃいます。話してみるとなるほどあまり知識がない。厳しいことを書いてしまいましたが、歌は堂にいったものです。声は良く出ているし度胸もある。

「歌」というものは一番身近であり、言葉をしゃべることの出来る人なら誰でも歌を歌えるのです。楽器は、そうも行きません。それだからこそ、歌を本格的にやろうと思う場合、プロになろうという場合、他の楽器以上にシビアな姿勢を保たなければならないと考えます。

自分の歌いたい「歌」、つまり伴奏も込みで自分の「総合的歌パフォーマンス」を観客に問うわけですから、アレンジ、伴奏への指示、現場でのリードすべてに責任を持たねばなりません。アレンジを考え、それを的確に理解させる明確な譜面を自分で書き、伴奏もすべての楽器を自分の考えるニュアンスで演奏できるくらいでなければ、本当に自分のパフォーマンスは出来ないと考えます。

実際は、ジャズは伴奏者と歌手が一緒に創り上げて(パフォーマンス)していくものですので、何から何まで「こうやってください!」と強制するのは、これまた違うと思います。

歌手の意識として「自分の考えるイメージ」はしっかり持っていて、そのイメージを的確にすべて伝えたうえで、それでいて現場ではそれぞれ(伴奏者など)の個性を受け入れるのが理想的だと考えます。

ちょっと矛盾しているように思われるかもしれませんが、確固たるビジョンを持たないで、「バンドさん、好きなようにやってください」では無責任である、と言っているわけです。

この日のヴォーカルさんは個性的な方で「なにもわからないんです」と言っておきながら、自分の思うように持っていける、ちょっと天才的なものを感じました。天才だからいいのだと考えた場合、そのうち破綻します。自分のイメージだけで歌を歌い続けられるなら良いでしょう。しかし観客の希望や“主催者”の意図を汲みそれに合わせる知識や、プロでなくとも、その場の全員で創り上げていくべきジャズをやるのであれば、共演者の意図を汲みそれを許容し、それに対して反応できる知識・力量は、絶対に必要だと考えます。

ヴォーカルさんもそのような意識をきちんとお持ちなのでしょう。知識を持たなければまずいと考え、だからこそ道場に参加したのだと思います。天才的なセンスに客観性を持たせ、応用力がついたら素晴らしいシンガーになるでしょう。

次回Jam道場は11月16日(水)15時〜からです。

高木宏真
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Vol.07 第7回Jam道場 事後報告 2005/10/12

初参加はテナー・サックスさん。といってもスワン第3日曜ジャムの常連さんです。楽器は相当吹かれている感じ。セッションにも慣れており、ノリとかアドリブの組み立て方、つまりソロの持っていき方、盛り上げ方を意識したら、いい感じになるなと思っておりました。

しかし、初歩的なミスもたまにあります。まことに残念です。伺うと、「わかってはいるが、いつもありきたりなソロではどうかと思いアドリブを冒険してしまう」とのこと。ジャズに慣れてくると誰もがそう思います。その姿勢はよいことです。ジャズは個性を出す音楽、自分ならではの演奏をするのがジャズの本分であるわけですから(だから、「教える」という行為には神経を遣います)。

音楽を演奏する以上聴かせる対象がいるはずです。それを無視しては「自己満足」。これもジャズの本分から外れることで、アマチュアといえども「聴かせようとする耳」にどう届くかということを意識すべきだと思います。冒険するのは結構ですが、冒険した結果コーラス半ばでソロが終わってしまうとか、2拍、1小節という単位でずれてしまっては何にもなりません。冒険する前に「丁寧にソロをとる」に徹することをお奨めしました。

「お奨めする」とは消極的な講師ですが、ジャズは個人表現ですから「冒険するな!」と厳命することで萎縮してしまっては何にもならないのです。テナー・サックスさんは理解してくれたようで、「自分もそう思っていたので、冒険はしばらくお預けしてみる」と言われました。ウィントン・ケリーを引き合いに出しました。ワタクシも大好きなピアニストですが、ハーモニー面などでは決して革新的なピアニストではありません。ワタクシ自身、何故ケリーのピアノに惹かれるのか考えました。自分で出した回答は“ノリ”です。4ビートにのって繰り広げられる8分音符のタイミングが自分の波長と合うのでしょう。

このように、聴く方にも好みがあります。譜面に書けばすべて同じになってしまうアドリブ・ソロでも、表記不能な“ノリ”の違いでたまらなく心地よくなったりするのです。アドリブのフレーズも、聴こえてくるハーモニーに対していわゆる“アウトする”みたいなことは極力避け、保守的でもハーモニーに対して安定感のあるフレーズを、“ノリ”を意識して吹くようにする。そうすることで、ヘンに熱くならずリラックスしてバックの演奏もちゃんと聴こえてきます。聴こえていれば、それをあえて無視し先のコードの部分のアドリブをすることの方が、よほど難しい。

当たり前のフレーズを、いかに抑揚をつけて情感込めて吹けるか。情緒を大事にするなら、“ノリ”にも意識が行くはずです。譜面に書いたら8分音符でも、スイングだと2拍3連を2:1のノリに近くなりますが、決して2:1のノリではありません。エヴァンスは2:1に近いノリですが、パウエルなどイーヴンな8分音符に近い。どちらも多くのファンを持つ。ジャズ・ファンはこの範囲内に、自分の波長にあう“ノリ”があります。好みは自由ですが、限界を越したものはジャズという範囲から外れてしまいます。

テナー・サックスさんは2:1の「タンタ、タンタ、タンタ、タン」というノリになっており、ワタクシの耳には気になりました。現状を治すのであれば、イーヴンな8分音符で吹くつもりでやってみては?と示唆しました。もともと2:1のノリですから、“過ぎる”くらいにイーヴンに吹くことで、心地よいスイング感が出るのではないかと考えました。自分の演奏を録音し客観的にファンの耳で聴き、自分が好きなノリになっているかどうか確認する。自分自身は、「ジャズ・ファンである自分」が最も好きなフィーリングを持つ演奏家でありたいものです。

高木宏真
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Vol.06 第6回Jam道場 事後報告 2005/08/19

初参加のピアノさんは、ソロ・ピアニストとして既に人前で弾いている方。

“ジャズ”の応用力を身につけ、バンド単位での演奏をしてみたいという目標をお持ちのようです。ピアノだけで、歌の伴奏をしていただきました。歌手からその場で渡された譜面には歌うメロディとコード進行のみが書かれているだけで、イントロはもちろん、ピアノで弾くフレーズが書いてあるものではありません。ピアノさんは、書かれていないイントロを弾き、コードを弾き、適度にオブリガードを入れるなどして、大筋でこなしました。流石です。

改善すべき点は以下のようなものです。

1.イントロに安定感を。
イントロで要求されるのは、テンポ、歌手に歌い始めるタイミングを伝える、そしてリズム・パターンです。歌い始めのタイミングは、小節数とハーモニーの両方で表現します。テンポの早い遅いで、4小節、8小節、もしくは16小節と、バランスのいい小節数は変わりますが、あらかじめ「4小節で」などと決めたり、指定したりするより、弾き始めてから自然と決定される小節数の方が理想的。それこそ「生理的」なわけですから。

リズム・パターン、ジャズというフィールドで言うなら、「4ビート」か「ボサ」か「ラテン」という指定です。この場合のボサは、厳密に言うと「ボサノヴァ風のリズムで」ということに過ぎない。「ラテンで」なんて、それこそ巾も奥も深いものを「ラテン」の一言で限定してしまうなんて、大変無謀な話です。しかしジャズは応用力の音楽。「ラテンで」という指定する方と受ける方に、さほど誤差がない。演奏が始まってからも演奏者全員で一つのパターンに集約できる。よくもわるくも、このような度量の広さゆえ、演奏の可能性が広がっていく。そこがジャズの面白いところと割り切るべきであると思います。

やや話がそれましたが、このように3つくらいのパターンに、無謀にも分けてしまうわけですから、イントロから「ボサ」「4ビート」という「ノリ」の違いを明確に提示しないとなりません。ピアニストは「ボサ」のつもりで弾いていても、シンガーにはどうしても「4ビート」に聴こえるということはよくあります。難しいことをする必要はありません。落ち着いて、丁寧に、「ボサ」なら「ボサ」のノリを、ピアノだけで出せるように研究しましょう。イントロは安定していることが一番です。

2.音数を減らす
コーラスに入ってからも、ピアノさんは一人で、ベーシストの役割、ドラマーの役割を一人でこなさなければなりません。一定のテンポを保つために、音数は増えます。遅めのテンポでは4分音符ひとつひとつの長さにかなり誤差がでます。それを回避するために、半分の8分音符を2つ入れる(細分化する)ということを、無意識にしてしまうためだと考えられます。余裕を持って4分音符を捉え、2分音符や、4分休符をも充分に待つことが出来れば良いのですが、他にも神経を使う点はたくさんあり、経験不足だと、走るか音数が多くなるか、ということに、どうしてもなってしまいます。

和音も、両手合わせて、常に5〜6和音が鳴っています。せめて、同時に鳴らす和音を間引いてみましょう。ポピュラー・ピアノのコードをジャズ的なサウンドにするために加えるテンション・ノート。そのために音数は増えるばかりです。思い切って、ルート(1度)や5度の音を省く、オフ・ビートのタイミングには3度と7度だけにするなど、研究してみましょう。

3.エンディング・パターンを考える。
考えたって出来ません。既成のパターンを自分のものにします。ジャズをたくさん聴いて、こういうテンポの曲では、こういうリズムの曲では、この曲にはこのエンディング・パターン、というのを探し出し、ストックしておく。それを最低限、C、F、Bb、Eb、GのKeyで弾けるようにします。予定調和、というとマイナス・イメージですが、「この曲にはこのエンディングでしょう!」と、大多数が期待するような場合、それを無理に外すのはブーイングものです。この曲にはこれがふさわしいというエンディング・パターンを、的確に、自信を持って導入できるように、知識、センス、応用力、度胸を鍛えましょう。

ピアノさんは基本的なところは出来ているので、今回の報告は難しい内容になってしまいました。他にも「このようにしたい!」と思うことを、自分自身で譜面に書けるようにしたいというシンガーさんも初参加されました。

次回は未定ですが、近いうちに日時を発表いたします。参加希望者でご希望に指示があれば、メールしてみてください。出来る限りご期待に沿いたいと思っております。

高木宏真
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Vol.05 第5回Jam道場 事後報告 2005/07/09

ジャズというのはレヴェルに差があっても共演できる!と紹介してきました。そりゃ「共演」は出来ますが、現実にはなかなか難しい。レヴェル上位の人も、レヴェル下位の人も同時に「楽しかった」「充実していた」と思えるかどうか?

この報告に何度か登場しているエレキ・ベースさんは大変熱心で毎回参加、確実に上達しています。第1回に参加してくれたピアノさんはジャズ・ピアノを弾き始めて20年ほど経つベテラン。途中に大変長いブランクがあったとおっしゃいますが、復活した現在のプレイも大変レヴェルが高いです。

この二人が共演しました。曲はブルースです。エレキ・ベースさんは確実に4分音符を繰り出してきます。フレットレスですが、音程も良くなりました。そのベース・ラインの上でピアノさんはアドリブを繰り広げていきます。「共演出来た」と言える演奏だったと、ワタクシは思います。

しかしヴォーカルが入り、歌手が指定した「歌もの」となるとちょっと厳しかったかもしれません。違和感のある音を弾かれヴォーカルさんは多少歌いにくかったようですが、レヴェルの高い(キャリアのある)ピアノさんは、ベースさんのためにベース・ラインを弾き、上手くフォローしてくれました。

上級者が初級者をフォローする。理想的な場面です。ベースさんには厳しい言い方だったかもしれません。当人にも上のような内容はお話しました。彼は非常に前向きであり、それをプラスに転じることが出来ると確信したからこそ、正直に申し上げたのです。彼自身も「言われて凹んだわけではありません。むしろ勉強になりました」と言ってくれました。

誰にでも「初級者」という時期はあります。ピアノさんにだってありました。その時、先輩(上級者)にフォローしてもらったこと、教えてもらったことを、お返しするのです。ただし、初級者だと共演が厳しくなるという「楽器」はあります。それがベースです。

「リズム隊」は“演奏”を安定して走らせる車の車輪に例えられます。同乗者(フロント?)が不安定でも、車の走行には支障はありません。しかしリズム隊、特に2輪駆動車の後輪に例えられうるベースが不安定だと、車が走行しないのです。「縁の下の力持ち」といえば聞こえはいいが、地味な立場です。

しかし、「おれが皆を安全に運んでいるのだ」「おれがしっかりしなければ車は止まる。おれの存在感はデカイ」という点に気づけば、モチベーションは上がります。多くの名ベーシストは早い時期にこれに気づき、この立場に至高の愛を感じ、それをバネに精進したのです。厳しいこと言って申し訳ない。しかし、確実に上達しているベースさん、今後もその調子でがんばってください。

次回も平日、8月16日(火)に開催いたします。日時、曜日にご要望がある方はメールなどでお知らせください。

高木宏真
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Vol.04 第4回Jam道場 事後報告 2005/06/10

今回は初参加、「ヴォーカル」の方について。

ジャム・セッションにはいろいろな楽器の人が参加します。「歌」で参加という方も当然いますが、いろいろな意味で特別な存在となります。

「歌」で参加する人が、選曲し、Keyを指定(オリジナルとは限らない)。他の楽器担当者はそれに従わなければならないし、出来ないと思えば辞退する。がんばってやってみるというのは立派な心がけですが、「主人公」である歌手の足を引っ張るのはまずい。

歌手が「それならばKeyを変えます」などと歩み寄ることは、現実的にほとんどありません。歌手は花形なんだから、というわけではありません。

一般的な観客の視点からは、そうなるべきだし、それが自然なのです。それだけに歌手の立場としては「やっていただく」という謙虚な姿勢が必要だと、考えます。謙虚なだけでは駄目で、「ここはこうやってください」「それ以外はおまかせです」というポイントを共演者に的確に説明する“義務”がある、と肝に銘じなければなりません。

花形、主人公であるためには、当然の“責任”です。歌い始めるためにしなければならないことは、曲の指定、Keyの指定(自分のKeyで書かれた譜面を持参することは、プロでもアマチュアでも必須)の次に、テンポ、リズム(4ビートかボサかラテンか…)の指示です。

今回参加の歌手はジャムでも御馴染みさんで、以上の「心構え」は万全です。出来ているかいないかより前に、その心構えがあるかどうか?という点が重要。歌手は「ちゃんとつたえなくては!」と一生懸命ですが、音楽的な指示をすることはなかなか難しいのです。

テンポを指示するのは、やってみるとわかりますが、意外と難しい。まして「こういうノリでお願いします」というニュアンスを伝えるのは、きわめて難しい。この歌手のお悩みもその点でした。4分音符の長さで物理的に決定される「テンポ」ですが、その4分音符を細分化する場合、2等分か3等分か?2等分は8分音符ですが、3等分とは2拍3連となります。しかもその2種は0か1かと分かれるものではなく、複合的(?)なものでそこから「ノリ」が決定されます。

活字や言葉で表記表現不可能な「ノリ」「リズム・パターンのニュアンス」を伝えるためのテクニックというのがあります。経験上、演奏家の方はこういう「ノリ」ならこのように伝えられると理解し易い、というポイントがあるように思います。それを学んでいきました。それは…。活字で表現するのは、難しいのです…。決して出し惜しんでいるわけではありません。現場で同じ空気を吸いながら、顔色や身振り手振りを総動員させて、初めて伝わる、それほど微妙なニュアンス。

興味がある方は、「演奏現場」にお越しください。演奏者、歌手のそういうところを「見る」のもジャズの醍醐味かもしれません。あっ、共演者は共演者で、歌手の指示から直ちにニュアンスをつかもうと努力することは、言うまでもありませんね。Jam道場、歌手の方も是非ご参加ください。また、スワンでは第二日曜にヴォーカル・ジャムとして、歌手中心のジャムがありますのでそちらにもご参加ください。熟練のミュージシャンの伴奏、プロのジャズ歌手でもある海老原しのぶさんが懇切丁寧に教えてくれます。

次回、第5回Jam道場は7月5日火曜日、14時より。さまざまなライフ・サイクルの方を想定し、初のウィークディの開催となります。みなさまのご参加をお待ちしておりますい。

高木宏真
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Vol.03 第3回Jam道場 事後報告 2005/05/16

遅くなりました。第3回Jam道場報告です。

今回は初参加、「自分のアドリブについて思うように行かない。どのようにやれば良いのか」ということで悩んでいるトロンボーンさんについての報告です。

聞かせていただくとなかなかよく出来ています。しかし、そのように感想を述べても自分に厳しい彼は、こんなもんじゃ納得いかないという勢いです。上には上があるし、下にも下がいくらでもあります。自分の頭で描いているものと、実際の音のギャップが問題の大きさとなるわけですね。

トロンボーンさんのアドリブは、コード進行には、ハーモニーには上手く乗れています。ハーモニーに乗れている、つまり外れていない、ただそれだけということかもしれません。外れるよりはいいですが、外れていなければ「いいアドリブである」ということではありません。

ジャズは、ハーモニー的にも、ハーモニーに対するアドリブも、リズム的にも、他様々な要素に関して、「心地よい裏切りをする」のが魅力、と考えます。言い方がカッコ良すぎならば、「わざとヤバいことをする」と言い換えてもいいです。ジャズ・マニアが「このソロ、アウトしててカッコいいじゃん」などという、あれです。

コードにテンション・ノートを入れて響きを複雑にする。「8分音符の3つ取り」とか、「2拍3連の4つ取り」など、リスナーを煙に巻くようなフレーズも、同じ考えに基づくものと考えられます。

保守的な母親は「危ないから、川から離れて歩きなさい」という。しかし、スリルが好きな子供は、わざと川へ近づき、土手の上を歩いたりする。「あ、危ない!」という瞬間に川から離れる。失敗して川に落ち、びしょぬれになり、母親に怒られる子供もいる。

このようなたとえ話をしました。落ちたくなければ川から離れて安全なところを歩けばいい。スリルを味わうのは快感だが、川に落ちてしまえば、取り返しのつかないことになる。トロンボーンさんは、非常に安全な道を、目的地(エンディング)に正しく向って歩いているわけです。

安全な道ばかりでは「ジャズ」の醍醐味が味わえない。ではスリルを感じさせ、なおかつ「沈没しない」アドリブはどのようにするのか?「危険ではあるがポイントを押さえているので絶対に落ちることはない、(変な言い方ですが)“安全な”危険な道をみつける」ために、ハーモニーのいろいろなパターンを理解し、自分の引き出しにたくさんストックしておく、という方法があります。

具体的には、メロディは知っているがコードは知らないという曲の、コード進行を自分でとってみる。さらにそのメロディに対し、それでいてそのメロディに合致した別なコード進行を考えてみるなどの提案、宿題を出してみました。

トロンボーンさんは、なにか気づかれたようでした。次回が楽しみです。

さて、第4回のJam道場は日曜となります。土曜日だと都合が悪いという意見もありましたので、日曜にしてみました。6月5日(日)です。仲間同士、ほぼ同レベル、知り合い同士の、バンド単位での参加が理想的です。是非とも、演奏仲間お誘いあわせの上、参加してみてください。リピーターの方もお待ちしております。

高木宏真
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Vol.02 第2回Jam道場 事後報告 2005/03/22

ピアノ、ギター、ウッド・ベース、エレキ・ベースの参加。エレキ・ベースの方はHP見ての参加。あとの3人はジャムの常連さんでした。

まずは4人で演奏。エレキとウッドの違いはありながら、2ベース編成は異例です。ジャズは何でもありということで、やってみました。

エレキ・ベース(以下敬称略)がラインを弾くので、ウッドはラインを弾くのを止めてみたりしました。こうした現場に即した対応は必要です。

若きエレキ・ベースと、20年近いキャリアのある常連とは、確かにレベルの違いはあります。しかし、誰でも演奏し始めの時期はあるのです。

参加者のピアノさんなどもそういう気持ちなのでしょう、直接助言してくださいました。ありがとうございます。

前向きに学ぼうと参加されたエレキ・ベースさんはレベルの向上を期待して参加されたわけですから、あえて申し上げました。彼は翌日のスワン・ジャムにも初参加、ここでは前日のJam道場効果でしょうか、明らかに腕を挙げていました。

Jam道場参加のギターさん、ウッド・ベースさんも同じように感じていました。これからも是非がんばって続けてください。レベルの高いピアノ、ギター、ウッド・ベースの3人での、次なる課題は、たった今演奏した「Autumn Leaves」を、
1.Key of G(Em)
2.3拍子で
3.テンポはこちらの指定
4.練習無しでいきなり演奏
というもの。

勿論譜面、コード譜なしです。熟練の3人もこの指示には驚いていましたが、見事に演奏してのけました。3人とも、このアレンジでの「Autumn Leaves」演奏の経験はないそうです。4拍子でのメロディを、無理やり3拍子に詰め込むわけです。

その場合、どのように詰め込むかは"センス"による。法則はなにもありません。しかし、聞いているほうが「枯葉」メロディと認識できないようでは失格ですね。テーマ・メロディはギターが弾きました。見事です。

練習する暇もなく始めたのでコードはリアルタイムで移調していくことになります。ベースもピアノもほぼ完璧。27、28小節だけ、ピアノは迷ったようです。これはGmコード(この場合はEm)の ベースラインだけ下がるパターンと、Gm C7 Fm Bb7(この場合はEm A7 Dm G7)と進行していくパターンが考えられるので、そこで迷ったのでしょう。

しかしながら、ピアノのバッキングは「休符」もありです。この時に「あちゃー!\(ToT) /(見失ったー!)」という顔をしないことです。「休符にしてみました!」と堂々としていれば何の問題もありません。こういう演奏態度も、実は重要だと考えます。

しかしベースはそうも行きません。ベースは前述の2つのパターンを取り混ぜ一度も止まることなく、ラインを続けました。そのライン作りも難しい。1小節に一発ルートを弾くだけならまだしも、3拍子ですから1小節に3音で次のコードのルート音に繋げるわけです。「1,234」とルートを弾いた後、3音で次のルートに繋ぐという4拍子の4ビート・ラインに慣れた感覚で、「1,23」と2音で次に繋ぐのは、やってみるとわかりますが、なかなか難しい。ベースさんもそうコメントされていました。

リアルタイム移調は難しいですが、それぞれに、どのような方法で移調を行ったのか訊いてみました。リズム隊とされるこの3種の楽器奏者は、2-5-1-4度といった度数でコード進行を捉え、それをKey of Gに当てはめたようです。

管楽器奏者はまた違った方法を用いるようですが、方法はなんでも構いません。要は、移調コード進行が出来ていればよいのです。この3人は完璧に出来ていましたが、出来ない方にどの方法を薦めるのかは、これまた難しい。しかし経験からいって、ギター、ピアノ、ベースに関しては度数方式がいいと考えます。

ギターさんが自ら告白していましたが、ギターは移調が楽な構造になっている。ピアノは白黒が均一に並んでいないので、移調はやはり度数で正しく捉えないとならない。ベースも4弦が等間隔に並んでいるので、ギター的に移調がしやすい。ベースにとっての関門は、やはりラインを作っていくことでしょう。

レベルの高い方たちの参加でしたので、かなり難易度の高い内容になったと思います。しかし、参加された方にあった効果的な内容を心がけます。事前に参加表明をされた時点で、講義内容を練ってまいりますので、どんな方でも是非ご参加ください。第三回は4月30日土曜ですが、土曜の参加が難しいと言う声もあるので、第四回は日曜を考えています。

高木宏真
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Vol.01 第1回Jam道場 事後報告 2005/02/21

「バンド編成で参加」「演奏しながら学ぶ」という形が理想ですが、個人での参加が多く、理想通りのバンド形態には残念ながらなりませんでした。

しかし参加していただいた方々はみな熱心であり、それなりに効果があったのではないかと思います。ご参加ありがとうございました。

「第三日曜スワン・ジャム」から派生したJam道場ですのでスワン・ジャム常連の参加が予想されましたが、「HPを見た。スワンには来た事がなかった」という参加者もおりました。

その方は既に高いレベルの演奏力をお持ちです。それだけに、気になる点を改善すれば安定感のあるプロ級の演奏が可能と感じました。

それほどのレベルですので、ワタクシが指摘した点など承知していらっしゃったようです。しかし頭で了解してそこに気をつけながら演奏したとしても、やはり個人練習では限界があるように思います。

その方はソロ以外の演奏からはしばらく遠ざかっていたといいます。この日は数年ぶりのセッションだったといいますが、1回目より(指摘させていただいた点を意識しての)2回目の演奏は格段に安定感のあるものになっていました。

やはりジャズ演奏家として力をつけるには、生身の人間とのセッションだと、再認識した次第です。個人レッスンは勿論有意義なことですが、それをした上でのセッションはレベルアップのためには必要不可欠です。

スワン・ジャム常連のベーシストさん、是非ご参加ください。よろしくお願いいたします。もちろん、このHPを見たという方もお待ちしております。

参加したかったのだが日時に都合がつかなかったと声も、店にとどいていたそうです。第二回目は1ヵ月後の同じ、第三土曜日。たとえば「平日の午後の方なら参加できるのですが…」というような意見がありましたら、BBSかメールなどでお知らせください。

高木宏真
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Vol.00 開設にあたって 2005/02

スワン40周年記念 「Jam道場」の講師を担当する高木宏真です。

ワタクシはジャズ・ピアニストであり、ジャズやポップスのピアノ(ギター、ベース含)、理論講座、歌伴奏者としてヴォーカリストへのレッスンも行っております。

老舗スワンでは10年続く"スワン・ジャム(第3日曜)"を担当しており、ジャズ雑誌の編集、ジャズ・ライターとして活動し、教則本『ジャズを演ろう』や、『ジャズが好きになる本』というジャズ入門ガイド・ブックも執筆、現在も教則本を執筆中である、そういう者です。

ジャム・セッションは、プロ、アマ関係なく「ジャズを演奏する」楽しさを最も痛感出来る行為。スワンの他"スタジオNave" "ハーフトーン" "コットン・カフェ"など様々な店でジャム・セッションを仕切らせていただいて、そこに集まる「ジャズを演奏するのが好きな人」と多数交流することで、痛切にそう感じています。

ミュージシャンとしてハイ・レヴェルの人との共演で刺激を受け、ジャズ・ピアニストとしての自分を育てていくことも重要且つ楽しいことですが、「ジャズ演奏の面白さ、楽しさを多くの人に知ってもらうこと」も、ライフ・ワークとなった感があります。

スワン・ジャムでは腕自慢の常連さんたちが「スワン・ジャムは他と比べてもよい」と言ってくださいますが、あながちお世辞でないのは毎回毎回多くの人が集まってくれるところを見ても解るような気がします。

手前味噌で申し訳ありませんが、スワン・ジャムは「質」「量」ともに充実しています。平均レヴェルは高いですが、ばらつきはあります。レヴェルの高い常連さんが、初心者を、あたかもハウス・ミュージシャンのように上手く導いてくれる、そんなところも「理想的なジャム」と言えるのではないでしょうか。

それでも、どんなに上手くてもジャズ演奏者として "完成"はありえません。レヴェルの高い常連さんも、こうするとより良くなるのではないか?と思うことしばしばです。

演奏に関する疑問・質問には極力お答えしていますが、なにせ毎回多くのお客さんで、全ての質問にその場で明快な答えを出すのは難しい。そこで、各楽器(基本的に)1人ずつ、ひとバンドに限定し、演奏しながら"カッコいいジャズ"を徹底的に研究しようと考えました。

ジャム・セッションには、「ストレス発散のために楽器を演奏する。それ以上は要らない。ただし酒は要る」という人もいるでしょう。それも勿論結構!大歓迎ですが、ジャズ演奏の向上を目指す方が集まり、"ジャズ演奏"をともに学んでいこうというのが、「スワン・ジャム」から派生した「Jam道場」なのです。

参加者と一緒にセッションしながら、自分の知識・経験から気がついた参加者の弱点を指摘し長所を伸ばし、さらに実践的なおいしい技、知識などを伝授してまいります。講師を任されたワタクシですが、一緒に楽しく学んでいこう!と思っております。

"先生"はどこまで行っても "先生"、技術の上下関係は明確にある「クラシック」と違って、「ジャズ」は"個性"の音楽です。"あの点"で奴に負けるが、"この点"では負けない。人一倍優れた"この点"を伸ばすことで、"欠点"も―隠せるどころか―プラスに転じさせることも可能なのです。

その可能性を知ってもらいたい。自分の伸びる可能性はどこにあるのかを、自惚れでなく、客観的につかんでもらいたい。自分にとって有効な"個性"とは何か、それ以前に、普遍的な"良いジャズ"はどのように演奏するのか、そのための基本的理論を、この「Jam道場」でつかんでいただきたいと思います。

高木宏真
http://www.rivo.mediatti.net/~cek45340/index.html

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